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これから開業することを検討している人であれば、自分が「どこで」開業をするのがお得なのかを知っておく必要があります。
なぜなら、国民健康保険料は住む場所によって計算方法と負担額が異なるからです。もし地域によって国民健康保険料の金額が異なることを知らなければ、同じ所得なのに平均よりも多い保険料を支払うことになってしまうかもしれません。
ここでは、
についてご紹介していきます。
開業場所を探すヒントとして是非ご活用ください。
平成28年に厚生労働省から発表されたデータによると、全国の市区町村で比較してみたときに、国民健康保険料が一番高い地域と安い地域の差がなんと6.3倍になることが分かりました。
国民健康保険の計算方法は市町村によって違うという特徴があるため、単純に保険料の金額だけで比較することができません。
そこで、「標準化指数」「応益割指数」「応能割指数」という3つの指数によって保険料水準を比較することとし、全国平均を1.0としたときの最大指数と最小指数の格差が6.3倍になったというものです。
下記は厚生労働省の平成26年度市町村国民健康保険における保険料の地域差分析から、平成26年度のデータをまとめた一覧表です。
都道府県別 | 最大指数 | 最小指数 | 差 |
---|---|---|---|
標準化指数 | 徳島県 1.284 | 東京都 0.848 | 1.5倍 |
応能割指数 | 徳島県 1.444 | 愛知県 0.823 | 1.8倍 |
応益割指数 | 石川県 1.173 | 埼玉県 0.686 | 1.7倍 |
市区町村別 | 最大指数 | 最小指数 | 差 |
---|---|---|---|
標準化指数 | 沖縄県多良間村 1.853 | 東京都三宅村 0.459 | 4.0倍 |
応能割指数 | 沖縄県多良間村 25.7 | 愛知県飛鳥村 0.421 | 6.3倍 |
応益割指数 | 北海島苫前町 1.721 | 鹿児島県三島村 0.312 | 5.5倍 |
都道府県全体でみると1.5~1.8倍程度の差しかありませんが、市区町村単位でみると地域差が大きくなっていることが分かります。
なぜ都道府県よりも市区町村のほうが、地域差が大きくなってしまうのでしょうか?
国民健康保険料は、「市区町村単位で運営を行っている」のがその理由です。
国民健康保険の運営母体は国や都道府県ではなく市区町村単位となっているため、それぞれの財政状況や高齢者負担率などが大きく異なります。
結果として、国民健康保険料の各指数にバラつきが出てきてしまうのです。
そのため、市区町村ではなく都道府県単位で比較した数値を参考に開業場所を決めてしまうと、実はその都道府県の中でもっとも指数が高い市区町村だった…ということになりかねません。
そのようなことを防ぐために確認したいデータが、「保険料指数等の都道府県内の最大、最小指数」です。
都道府県内の最大指数の市区町村と最小指数の市区町村の差が少ない都道府県を選べば、どこの市区町村に住んでも県内全体でそれほど大きな違いはない、ということになります。
都道府県別 | 最大指数 | 最小指数 |
---|---|---|
標準化指数 | 沖縄県 2.9倍 | 滋賀県 1.3倍 |
応能割指数 | 沖縄県 4.4倍 | 滋賀県 1.3倍 |
応益割指数 | 鹿児島県 3.6倍 | 香川県 1.3倍 |
(参考:平成26年度市町村国民健康保険における保険料の地域差分析)
住む場所に関係なく売上を伸ばすことができる事業であれば、国民健康保険料が安い地域で開業する選択肢もあるでしょう。
しかし実際には、より多くのお客様に利用してもらうことで事業が成り立つ店舗開業やクリニック開業などが一般的なのではないでしょうか?
そこで、開業場所を問わずに国民健康保険料を安くするための具体的な方法をご紹介していきます。
これから個人事業で起業する方なら、知っておいて損をすることはありません。
まず1つめの方法は「任意継続保険」を利用する方法です。
任意継続保険とは、現在給与所得者として働いている人が、退職しても会社の健康保険を継続できる制度のことです。
任意継続保険を適用すれば、国民健康保険料よりも安くなる可能性があるだけでなく、今までと同じ給付内容を受けることができます。
会社の健康保険組合が実施する事業内容によっては、スポーツ施設の割引優待や保養施設の利用などが可能となります。
さらに、配偶者や扶養家族がいる場合は、被保険者が保険料を支払うだけで家族全員分をカバーできるメリットがあります。
意外に思われるかもしれませんが、国民健康保険料には「扶養」という概念がないため、家族1人1人が健康保険料を支払う必要があります。
扶養人数が多くなるほど健康保険料の負担が重くなるため、任意継続保険ならその負担を大きく軽減することができるでしょう。
ただし、任意継続保険は退職してから2年間しか適用できないデメリットがあります。
任意継続保険が2年経過すると自動で脱退となり、国民健康保険に新規加入する必要があります。
退職してすぐに開業しても、事業が軌道に乗らないことがあるかもしれません。そのような場合に備えて任意継続保険を選択しておくと安心です。
任意継続保険は、退職後20日以内に手続きをしなければなりません。
退職して実家に戻って開業するような場合は、会社の健康保険組合への書類送付日数などで時間を要することがあります。
退職前から書類を取り寄せたり担当窓口の連絡先を確認したりするなど、任意継続保険に関する準備をしておくようにしましょう。
2つめの方法として、親族の扶養に入る方法があります。
配偶者や父母、兄弟が会社に勤務しているなら、その会社の健康保険組合の扶養に入れてもらうのです。そうすれば、健康保険料を支払うことなく、健康保険の3割負担で受診することが可能になります。
ただし親族の扶養に入ることができるのは、年間収入130万円未満という条件があります。
開業して年収が130万円を超えてしまうと、すぐに国民健康保険へ加入手続きをとらなければなりません。
会社の健康保険組合によって収入制限は異なりますが、ほとんどの健康保険組合が「130万円」という基準を採用しています。扶養に入ろうと思っている場合は、あらかじめ扶養に入れる収入金額を確認しておくと安心です。
3つめの方法は、個人事業主でも加入できる健康保険組合に加入する方法です。
東京都の場合だと、下記のような健康保険組合があります。
「東京」という名称が付いている健康保険組合であったとしても、近郊の都道府県でも加入できるものがあります。
気になる健康保険組合があれば加入条件を確認してみましょう。
4つめの方法は、法人化を検討する方法です。
もし開業した事業が法人化すれば、従業員がいる場合はもちろんのこと、1人社長でも健康保険組合に加入することができます。
会社が健康保険組合に加入した場合は、保険料の半分を会社の経費にすることができますから、自己の負担額を大幅に軽減することが可能となります。
もし国民健康保険に加入することになった場合は、市区町村の国民健康保険に減免制度等があるのかを確認しておきましょう。
減免制度があれば、所得金額によって国民健康保険料の負担が軽くすることができるからです。
国民健康保険料は、前年度の所得金額を元に計算することになるため、退職前の所得金額が多ければ開業してすぐに売上がなくても、前年度分の所得金額に応じた保険料を支払うことになる点で注意が必要です。
国民健康保険料は、住む場所によって負担する金額が異なるのが事実です。
しかし平成30年から国民健康保険の運営が市区町村から都道府県へ移管されることになっています。
国民健康保険に関する今後の動向に注視し、自分にとって損をしない最適な方法を検討するようにしましょう。
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