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基本的に株式会社が発行する株式は「普通株式」です。
株主は、保有している株式の内容と数に応じて平等の扱いを受けるのが原則です。
1株に付き1個の議決権があり、持ち株数が多いほど議決権や分配・配当も多くなるという仕組みです。
しかしながら、「非公開会社」に限っては「株主ごと」に異なる取り扱いをすることができる株式を発行することができます。
これを「属人的株式」と呼びます。
非公開会社とは、株式譲渡制限会社とも呼ばれますが、自分が持っている株式を第三者へ譲渡場合には、その会社の承認を得なければ譲渡できないように制限が付いている会社です。
つまり、株主の意思だけでは自由に売り買いができない株式です。
会社の登記簿謄本には「株式譲渡制限の有無」が登記されていますので、非公開会社であるかどうかは見ればすぐに分かるようになっています。
この非公開会社に限っては、下記に関する権利を株主ごとに異なる取り扱いとする事ができます。
例えば、オーナー社長は1株当たり100個の議決権、社長以外の株主には1株当たり1個の議決権とすることもできますし、株主Aには他の株主よりも2倍の配当を与えるとすることもできます。
持ち株数が同じでも株主ごとに議決権を変えたり、配当を受ける権利を変えることができるのです。
株主ごとに権利内容の異なる株式を発行できるという特徴を活かして、「特定の株主だけに配当を増やしたい場合」や「特定の株主だけに議決権を集中させたい、あるいは議決権をなくしたい場合」等に活用できます。
例えば、外部から出資を募りたいが、会社の経営には参加してほしくないといった場合、単に議決権を与えない株式では当たり前ですが出資するメリットがありません。
そこで、議決権は無いが優先して配当をするという株式を発行することで出資を募ります。
このようにすれば、オーナーの経営権はそのままに資金を調達することができます。
属人的株式を導入するには、定款変更が必要です。
定款変更は、株主総会において全ての株主の半数以上かつ、全ての株主の議決権の3/4以上の賛成が必要です。
ほぼ株主全員の同意がいると言っても過言ではないので、1人会社や同族会社であれば問題ないですが、株主が多数いる会社では不向きです。
属人的株式を設定しても登記は不要であり、会社の登記簿謄本には記載されませんので、定款を見ない限り外部からは確認できません。
実際に属人的株式で出資を募る場合は、会社の資本金が増えることになりますので、法務局へ登記申請が必要です。
例えば、株主総会において議決権を制限する属人的株式を発行する場合は、その旨を定款に定めます。
(属人的定め)
第○条 株主A以外の株主は、その有する株式数にかかわらず、株主総会における議決権を有さない。
この定款変更には「特殊決議(総株主の半数以上の出席かつ総議決権の4分の3以上の賛成)」が必要です。
そして上記の定款変更後すぐに属人的株式の発行(増資)を行う場合は、続けて決議を行います。
この増資の決議は、「特別決議(議決権の過半数の株主が出席し、その株主の議決権の3分の2以上の賛成)」が必要です。
属人的株式を引き受ける株主へ募集事項を通知し、その株主からの申し込みを受けます。
募集株式引受人から出資金の払込みを受けます。
管轄の法務局へ増資(募集株式発行)の登記申請を行います。
定款に属人的株式を定めるだけであれば、法務局への登記申請は必要ありません。
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