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大企業なら、退職金制度が整っているのは珍しくありません。
しかし、創業間もないベンチャー企業や中小企業だとなかなか難しいもの。
そして、個人事業主に至っては退職金を設定できません。でも、ビジネスの一区切りをつけるときには、せめてまとまったお金が欲しいのではないでしょうか。
そこで、退職金制度の代わりとして活用できる小規模企業共済についてご紹介します。
個人事業主、小規模な法人の役員等が、退職したり事業を廃止した場合に解約し、それまでに積立た掛金に応じた共済金を受け取れます。
ベンチャー企業、中小企業の経営者、個人事業主など、自前で退職金制度を準備・運営できないケースをフォローするのが目的です。独立行政法人中小企業整備機構が運営しています。
あくまで、小規模なビジネスをフォローするのが目的の共済です。
そのため、加入条件はかなり厳しく定められています。わかりやすい表にしてみました。
業種 | 常時使用する従業員数(組合員数) | 経営者・役員 | 個人事業主の共同経営者 |
---|---|---|---|
建設業、製造業、運輸業、宿泊業、娯楽業、不動産業、農業 | 20人以下 | ○ | ○ |
卸売業、小売業、宿泊・娯楽業以外のサービス業 | 5人以下 | ○ | ○ |
企業組合、協業組合 | 20人以下 | ○ | - |
農事組合法人 | 20人以下 | ○ | - |
士業法人 | 5人以下 | ○ | - |
掛金を払い始めて12か月以上経過していれば、次に掲げる共済金を受け取れます。個人事業主と法人によって請求理由が違うのも押さえておきましょう。
共済金の種類 | 法人の場合の請求理由 | 個人事業主の場合の請求代理 |
---|---|---|
共済金A | 法人の解散 | ・廃業 ・配偶者・子以外への事業の全部譲渡 ・死亡 ・全額金銭出資による法人成り |
共済金B | ・病気、けがによる役員の退任 ・死亡 ・65歳以上で180か月以上掛金を払い込んだ場合 |
65歳以上で180か月以上掛金を払い込んだ場合 |
準共済金 | 法人の解散、病気・ケガ以外の理由による役員の退職散 | ・配偶者・子への事業の全部譲渡 ・法人化したが、その法人の役員にならなかった場合 |
解約手当金 | ・任意解約 ・機構解約(掛金の12か月以上の滞納) |
・任意解約 ・機構解約 ・法人化して、その法人の役員になった場合 |
なお、共済金A・共済金B・準共済金については、36か月(3年)以上加入すれば、掛金総額より多くの共済金が受け取れます。
まず、掛金を積み立てた場合、その時点で法人なら経費、個人事業主なら所得から控除という形で処理できます。
また、解約手当金を受け取った場合。個人事業主であれば退職所得にできるので、さらなる節税が見込めるのも特徴です。
そこで、事業所得の一部を掛金として積み立て、受け取った共済所得を退職所得として処理し節税する方法が考えられます。
掛金は月1,000円から7万円まで、500円刻みで設定できます。
創業したてで資金力に不安がある場合でも、無理なく取り組めるのが特徴です。
小規模企業共済で掛金を積み立てていれば、積み立てている金額の範囲内で融資が受けられる、資金繰りが厳しいときに活用できる制度です。
例えば、月3万円ずつ、5年積み立てていれば180万円(=3万円×5年×12か月)まで融資が受けられます。
解約手当金が解約時点までに積み立てた掛金の100%に達するには240か月(20年)の期間を要します。その前に解約してしまうと、損をする計算です。
解約を考えるなら、タイミングには十分注意しましょう。
小規模企業共済において、掛金を減額できるのは次の理由が生じたときとされています。
つまり、よほどの理由がないと掛金は減額できない、と考えてください。
また、減額した分については、減額した時点以降は全く運用されなくなります。
さらに、途中で解約し解約手当金をもらった場合でも、かなりの確率で損をするのも覚えておきましょう。
法人において、経営者・役員の退職金を準備するもう一つの手段として、生命保険があります。
つまり、生命保険を使えば、退職金の原資を積み立てられるのに加え、有事の際の事業保障が受けられるのです。
しかし、小規模企業共済は、経営者の引退後の生活資金の積み立てという性質が大きいため、有事の際の事業保障としての役割は期待できません。
小規模企業共済の性質、メリット、デメリットについて解説してきました。
性質を知って使えば、中小企業の経営者、個人事業主の方にとって心強い味方になります。
ただし、掛金の設定や解約のタイミングを間違えると、結果として損をする可能性が高いです。導入する際は、下調べをし、適切な専門家のアドバイスを仰ぐのを忘れないようにしましょう。
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