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当ページでは、株式会社の本店移転手続きについて、一般の方でも理解して頂きやすいように、なるべく専門用語は使わずに分かりやすく解説しています。
本店移転手続きの流れや申請に必要な書類、移転先を選ぶ場合の注意点などのほか、Q&Aも掲載しておりますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
では、どうぞご覧くださいませ。
【目次(もくじ)】
まず、会社の本店移転手続きを行うにあたり、以下の3点について確認します。
まずは貴社の定款をご確認ください。(本店所在地)を記載している条項をご覧頂くと、下記のうちいずれか一方で規定されているかと思います。
具体的な所在地まで記載してある場合 | 本店移転により、必然的に定款変更 |
---|---|
最小行政区画(市町村・東京都の場合は23区)のみ記載してある場合 | 移転先がその範囲外であれば定款変更 |
具体的な所在地まで記載している場合は、所在地が変わる=定款の変更となります。
定款変更を行うには、取締役会を設置しているか否かに関わらず、株主総会を開いて定款変更の議決を経る必要があります。
そもそも定款とは?定款変更とはどんな手続き?という方は、下記ページもご覧ください。
▼ 参考
同一管轄区域内での移転の場合 | 当該法務局に本店移転登記申請をすることで足ります(登録免許税は3万円) |
---|---|
他の法務局管轄区域への移転の場合 | 旧本店所在地の法務局への申請と新所在地の法務局への申請の2件の登記申請書が必要です(登録免許税は6万円)。ただし、申請書は同時に旧所在地の法務局へ提出 |
※管轄内移転よりも管轄外移転の方が変更申請をしてから完了するまでに日数が掛かります。後述しますが、申請に必要な書類の数も変わってきます。管轄外移転で本店移転手続きを急いでいる場合は、早めに手続きに着手していきましょう。
同じ住所に同じ名前の会社がなければ登記自体は可能です。ですから、類似商号調査の必要性は会社法の施行によって薄れましたが、不正競争防止法等の観点からも、法務局において変更後の商号の事前調査を行っておくことをお勧めします。
法務局に商号調査専用の端末がありますので、確実に手続きを行いたい場合は面倒臭がらずに利用しましょう。
商号調査に加えて、インターネット検索などで同じ名前の会社が無いかも併せて確認しておくとより確実です。
前述の通り、本店移転手続きにおいては、上記POINT2の法務局の管轄が変わるか変わらないかによって、手続きの方法や登録免許税の額、必要書類、手続き完了までの期間等が大きく異なります。
ここからは、法務局の管轄区域<内>での移転、管轄区域<外>での移転、ケース別で解説していきます。
以下、見ていきしょう。
株主総会や取締役会(取締役会が無い場合は取締役の過半数の決定)で会社の本店所在地(住所)の移転・変更を決議した場合、移転・変更の日から2週間以内に旧本店所在地を管轄する法務局において、本店移転の変更登記申請を行う必要があります。
法務局の管轄区域内で移転を行う場合、定款変更があるかないかで手続きの流れが異なります。
定款変更が必要な場合は、株主総会を開く必要があります。株主総会では定款変更の決議を行い、株主の了承を得ます。
そして、具体的な移転先と移転日については取締役会(取締役会が無い場合は取締役の過半数の決定)で決めます。
定款変更が不要な場合は、取締役会において具体的な移転先、移転日を決めます。
STEP1
株主総会の開催の決定(定款変更がある場合)
定款変更を行う株主総会を開催することを決定します。
株主総会を開催するには、取締役が株主総会の招集の決定をしなければなりません。
取締役会を設置していない会社では取締役の過半数の一致で、取締役会設置会社では、取締役会の決議に基づいて、開催日時、場所、議題等を決定します。
STEP2
株主の招集(定款変更がある場合)
株主総会の開催が決定したら、各株主へ招集通知を出します。
招集通知を発する期間は、会社の類型別に定められています。
STEP3
株主総会の開催(定款変更がある場合)
定款変更は「特別決議」によって行われるため、議決権の過半数を有する株主が出席しなければなりません。
株主総会へ出席できない株主は代理人を出席させて、議決権を行使することもできます。
STEP4
定款変更の決議(定款変更がある場合)
定款変更は株主総会の特別決議によって行われます。
株主総会の特別決議は、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
ただし、定款において3分の2を上回る定めを置いている場合は、定款に定められた決議方法に従います。
株主総会開催後、議事の経過や議決内容を記載した「株主総会議事録」を作成します。
STEP5
取締役会の開催
取締役会において、具体的な移転場所と移転時期を決定します。
取締役会の決議は、取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行ないます。
取締役会を設置していない会社では、取締役の過半数の一致で決定します。
取締役会の閉会後、議事の経過や議決内容を記載した「取締役会議事録」、取締役会を設置していない会社では「取締役決定書」を作成します。
STEP7
変更登記申請を行う(本店所在地を管轄する法務局)
本店の移転日から原則2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局で本店移転の登記申請を行います。
登記期間の2週間を過ぎても法務局に申請はできますが、あまりにも過ぎた場合は登記懈怠として、過料の対象になる可能性がありますので、注意してください。
STEP8
株主総会議事録の備え置き
株主総会議事録は、会社の本店(本社)において10年間しておかなければなりません。
尚、書面(紙)ではなく、電磁的記録(データ)で作成・保存しても構いません。
STEP9
必要に応じて定款の再作成
定款変更があった場合でも、基本的には定款(紙)を作り直す必要はなく、株主総会議事録と変更前の定款を一緒に保管しておくことで足ります。
定款(紙)を最新の定款「現行定款」にしたい場合は、ワードなどで一から作成し直すことになります。
必要書類 | 各書類の説明 |
---|---|
本店移転登記申請書 | 登記所へ提出する申請書 |
株主総会議事録(議事録サンプル) |
本店移転に伴い、定款の変更が必要となる場合に限って、添付します。 定款では、本店所在地(最小行政区画である市区町村又は東京23区まで)を規定することで足りますので、その具体的所在地までを記載する必要はありません。 その所在地外(最小行政区画外)に本店を移転する場合又は定款に具体的に所在地まで記載している場合は、定款を変更して、その所在地を変える必要があります。 |
取締役会議事録又は取締役の過半数の一致を証する書面 | 本店を移転するときは、取締役会(取締役会非設置会社は、取締役の過半数の一致もって)において具体的な移転の場所及び移転の時期等を決議する必要があります。 |
株主総会や取締役会(取締役会が無い場合は取締役の過半数の決定)で会社の本店所在地(住所)の移転・変更を決議した場合、移転・変更の日から2週間以内に旧本店所在地を管轄する法務局において、本店移転の変更登記申請を行う必要があります。
旧本店所在地の法務局への申請と新所在地の法務局への申請の2件の登記申請書が必要です。ただし、申請書は同時に旧所在地の法務局へ提出することで足ります。
※法務局の管轄区域についてはこちらを参照下さい。
法務局の管轄区域外で移転を行う場合、現在の本店所在地を管轄する法務局と移転先の本店所在地を管轄する法務局の2つの法務局へ提出する書類を作成します。
管轄外移転の場合は必ず定款変更を伴いますので、株主総会を開いて定款変更の特別決議を経る必要があります。
STEP1
株主総会の開催の決定(定款変更がある場合)
株主総会を開催するには、取締役が株主総会の招集の決定をしなければなりません。
取締役会を設置していない会社では取締役の過半数の一致で、取締役会設置会社では、取締役会の決議に基づいて、開催日時、場所、議題等を決定します。
STEP2
株主の招集
株主総会の開催が決定したら、各株主へ招集通知を出します。
招集通知を発する期間は、会社の類型別に定められています。
STEP3
株主総会の開催
定款変更は「特別決議」によって行われるため、議決権の過半数を有する株主が出席しなければなりません。
株主総会へ出席できない株主は代理人を出席させて、議決権を行使することもできます。
STEP4
定款変更の決議
定款変更は株主総会の特別決議によって行われます。
株主総会の特別決議は、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
ただし、定款において3分の2を上回る定めを置いている場合は、定款に定められた決議方法に従います。
株主総会開催後、「株主総会議事録」を作成します。
STEP5
取締役会の開催
取締役会において、具体的な移転場所と移転時期を決定します。
取締役会の決議は、取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行ないます。取締役会を設置していない会社では、取締役の過半数の一致で決定します。
取締役会が終わったら「取締役会議事録」、取締役会を設置していない会社では「取締役決定書」を作成します。
STEP6
登記申請書類の作成
法務局へ登記申請するための必要書類を作成します。
STEP7
変更登記申請を行う(本店所在地を管轄する法務局)
本店の移転日から原則2週間以内に、現在の本店所在地を管轄する法務局へ本店移転の登記申請を行います。
登記申請書類はまとめて現在の本店所在地を管轄する法務局へ提出します。新しい本店所在地を管轄する法務局に提出する書類は、旧法務局から移送される仕組みです。
登記期間の2週間を過ぎても法務局に申請はできますが、あまりにも過ぎた場合は登記懈怠として、過料の対象になる可能性がありますので、注意してください。
STEP8
株主総会議事録の備え置き
株主総会議事録は、会社の本店(本社)において10年間しておかなければなりません。
尚、書面(紙)ではなく、電磁的記録(データ)で作成・保存しても構いません。
STEP9
必要に応じて定款の再作成
定款変更があった場合でも、基本的には定款(紙)を作り直す必要はなく、株主総会議事録と変更前の定款を一緒に保管しておくことで足ります。
定款(紙)を最新の定款「現行定款」にしたい場合は、ワードなどで一から作成し直すことになります。
必要書類 | 各書類の説明 | |
---|---|---|
旧登記所用 | 本店移転登記申請書(登録免許税3万円) | 登記所へ提出する申請書 |
株主総会議事録(旧登記所用)(議事録サンプル) |
本店移転に伴い、定款の変更が必要となる場合に限って、添付します。 定款では、本店所在地(最小行政区画である市区町村又は東京23区まで)を規定することで足りますので、その具体的所在地までを記載する必要はありません。 その所在地外(最小行政区画外)に本店を移転する場合又は定款に具体的に所在地まで記載している場合は、定款を変更して、その所在地を変える必要があります。 |
|
取締役会議事録又は取締役の過半数の一致を証する書面 | 本店を移転するときは、取締役会(取締役会非設置会社は、取締役の過半数の一致もって)において具体的な移転の場所及び移転の時期等を決議する必要があります。 | |
新登記所用 | 本店移転登記申請書(登録免許税3万円) | 登記所へ提出する申請書 |
印鑑届出書 |
他の登記所管轄内に本店を移転した場合には、登記の申請書に押印すべき者は、新本店所在地を管轄する登記所に印鑑を提出しなければなりません。 ※印鑑証明書の添付は必要ありません。 |
代表取締役が引っ越しをして住所が変わった場合、法務局への変更登記手続きが必要です。
代表取締役の「住所」は登記事項だからです。
本店所在地を代表取締役のご自宅住所にしている会社さんが本店移転を行う場合、同時に「代表取締役の住所変更登記」も行わなければなりません。
なお、代表取締役の住所変更登記には登録免許税が10,000円掛かります。
本店移転(管轄内)+代表取締役住所変更の場合は登録免許税は40,000円。本店移転(管轄外)+代表取締役住所変更の場合は登録免許税が70,000円。高いですね^^;
登記を懈怠すると裁判所から過料に処せられることもあります。
登録免許税が多少高くなったとしても、登記申請は必ず行っておきましょう。
本店の移転先をバーチャルオフィスやレンタルオフィスにする場合、考慮しなければならない点があります。
特にバーチャルオフィスは、実際オフィスを借りるわけではなく、その住所に会社は存在しません。
住所を借りているだけですので、登記ができるのか、郵便物を受け取ることができるかなど、事前に確認しておかなければならないことがあります。
一口にバーチャルオフィス・レンタルオフィスと言っても、どのようなサービスを提供しているかはその運営会社により異なります。
バーチャルオフィスの運営会社によっては、登記サービス(住所貸しサービス)を提供していないところもありますし、登記できたとしても有料なところもあります。
そもそも本店を移転するのに、住所が使えなければ意味がありません。バーチャルオフィスだから登記ができないというわけではなく、その運営会社によって登記住所として使えるかどうかサービス内容を決めているのです。
ですので、バーチャルオフィスやレンタルオフィスに移転すると決めたら事前に登記ができるかを確認しておく必要があります。
近年、法人の銀行口座の開設が厳格になっています。
特に実態のないバーチャルオフィスを本店にしている場合は、銀行口座の開設が大変厳しいのが現状です。
これは、振込め詐欺などにバーチャルオフィスで作った会社が悪用されていたことから、金融機関で口座開設の際の本人確認が厳格化されているためです。
現在すでに法人の銀行口座を開設しているのであれば、移転しても引き続きその銀行口座を使用できますので問題はありませんが、これから銀行口座を開設するのであれば、注意が必要です。
バーチャルオフィスやレンタルオフィスだからといって銀行口座が開設できないというわけではありませんが、口座開設を希望する銀行の開設手続きをあらかじめ調べておくなど、事前準備が必要です。
当たり前ですが、登記された本店住所宛に役所等から郵便物が届きます。
もちろんバーチャルオフィスやレンタルオフィスでも、実在する住所であれば郵便物は届きます。バーチャルオフィスでは、届いた郵便物や宅配便を一旦受付で預かって、週に1回程度の割合で指定住所へ転送してくれるサービスを提供していることがほとんどです。
ただし、登記する住所に注意が必要です。
例えば、バーチャルオフィスの住所が「神戸市東灘区向洋町中6丁目9番地神戸ファッションマートビル」であったとします。
このオフィスビルには、複数の企業や事務所が入っています。そうすると住所に階数や号室などを入れずにビル名だけで住所を登記すると、会社が特定できず、郵便物が届かないといったことが発生します。
バーチャルオフィスやレンタルオフィスで登記する場合は、きちんとした住所はもちろん、ビル名や階数・号室などを含めて登記するようにしましょう。
法人名義でクレジットカードが発行できますが、本店がバーチャルオフィスの場合、クレジットカード発行会社によっては審査に通さない会社もあります。
審査内容は不明ですが、バーチャルオフィスというだけで一律NGなカード会社もあれば、カードのグレードによって審査内容を変えている、代表者名義の銀行口座等があれば申し込みが可能なカード会社もあります。
クレジットカードを発行予定であれば、希望するクレジットカード会社にあらかじめバーチャルオフィスでも申し込めるか調べておく必要があります。
バーチャルオフィスですと実際にオフィスが存在しないため、事業実態が把握しにくいというデメリットがあります。
バーチャルオフィスやレンタルオフィスというだけで融資を断られることはありませんが、普通にオフィスを借りている会社に比べて、融資審査が厳しい傾向にあります。
融資を受けるために重要なのは、きちんとした事業計画で収益がしっかりあがっている、返済能力があることですので、優良な企業であれば断られることはありません。
創業時融資や起業間もない(売上がない)時に資金を借りるのが難しいのは、普通の会社と変わりありません。
バーチャルオフィスで融資を受けるのであれば、顧問税理士さんを介して申込むなど、計画的に準備することが必要です。
バーチャルオフィスやレンタルオフィスだとスペースの確保が難しいことから、許認可の取得が厳しいケースがあります。
役所から許認可を受けて行う代表的な事業に
があります。
これらの許認可の共通点として、事業を行う営業所・設備を確保しておかなければならないというルールがあります。営業所の面積や設備が指定された許可要件を満たしていなければ、許可はおりません。
レンタルオフィスでは、どのような契約内容で借りているかが重要です。独立した個室で長期契約で借りているかなど、状況によっては許可がおりるかもしれません。
一方、バーチャルオフィスは営業所としての実態がありませんので許可は厳しいと言わざるを得ません。
もし役所の許認可が必要な事業を行うのであれば、事前の確認が必要です。
実際にあったA社長の体験談です。
本店移転登記は書類の作成から法務局での処理期間を含めると1〜2週間はかかります。
A社長は見つけたお気に入りの物件を早く抑えておきたいからと、まずは個人名義で早々に賃貸契約を行いました。
マンションの1階部分が全て店舗になっている商業施設兼マンションのような施設でしたので、当然、法人登記も可能だと思い込んでらっしゃいました。
本店移転登記を行ったあとに、いざ個人から法人へ名義を変えようとしたら、大家から突然のNG。。。
契約条項をよく読むと、法人はダメ。ときちんと書いてあったのです。
オーナーに頭を下げて頼み込んだものの、後の祭りです。
結局、名義変更は認めてもらえず、もう一度移転登記を行うことに。
二度手間で、かつ、登録免許税も2重払いとなってしまいました。
店舗が並んでいる施設でしたし、社長の気持ちも分からないでもないですが。。。
個人商店はOKでも、法人はNGという一風変わった物件もあるのです。いくら急いでいたとは言え、契約の前に、契約内容の確認はしておくべきでしたね。
本店移転登記には決して安くはない登録免許税がかかります。このようなことにならない為にも、その物件が法人登記OKか、必ず事前に確認しておきましょう。
本店移転登記が完了しましたら、税務署、都道府県税事務所、市税事務所等への異動届が必要になります。
税務関係の届出は、顧問税理士さんがいらっしゃる場合は、頼めばやってくれますので、忘れずに報告しておきましょう。
また、社会保険、労働保険(年金機構、労働基準監督署等)、雇用保険(ハローワーク)の届出もそれぞれ必要です。
新・旧両方への管轄官庁への届出が必要な場合もありますから、注意してください。許認可業種の場合はもちろん監督官庁への届出も忘れずに行います。
会社名義で自動車を保有している場合は車庫証明の新規取得(軽自動車の場合は地域によっては不要)、車検証の記載変更が必要です。
その他、銀行、電気・ガス・水道などの住所変更手続きも当然必要になります。
本店移転日はいつでもいいでしょうか?
実際に本店を移転する日が移転日です。
移転先や移転日は、取締役会の決定で行いますので、取締役会で「本店を○年○月○日に移転する」と決定した日が移転日として登記されます(取締役会を設置していない会社は、取締役の過半数の決定で決議します)。
会社を移転する場合、事前に移転先や移転日はある程度決まっていますので、「取締役会で移転先と移転日の決定」→「移転」→「法務局へ変更登記の申請」の流れとなります。
あくまでも移転日を決めてから実際に移転するのですが、何も決定せずに先に移転をしてしまった場合は、さかのぼることができませんので、移転を決議した日が移転日になるとされています。
では、決議をした日よりも後に移転となった場合は、どうなるのでしょうか?
この場合は実際に移転した日が移転日となります。
なお、移転日よりも前に法務局へ登記申請することはできませんので、移転日が未来日であればその日以降にしか登記することはできません。
2月1日が移転日ですと、1月中は登記申請はできず2月1日以降に申請可能となります。
本店移転をした場合、印鑑カードはそのまま使えますか?
本店の移転先により異なります。
会社の印鑑カードは、会社の印鑑証明書を発行する際に必要なカードです。
会社の所在地を管轄している法務局で発行されますので、もし本店移転をして法務局の管轄が変わるのであれば、新しい法務局で印鑑登録を行って、印鑑カードを発行してもらう必要があります。管轄外の法務局へ移転すると現在の印鑑カードは使えなくなりますので、原則、法務局に返却してください。尚、印鑑カードの発行手数料は無料で行えます。
【管轄内移転の場合】
現在の法務局の管轄内で移転するのであれば、印鑑カードはそのまま引き継げますので、特に何の手続きも必要ありません。
【管轄外移転の場合】
法務局の管轄が変わる移転の場合は、移転後の管轄の法務局で新しい印鑑カードを発行してもらう必要があります。
印鑑カードを発行するには、所定の様式「印鑑届書」に会社の印鑑(法人実印)を押印して提出し、印鑑を登録してもらう事が必要です。この印鑑の登録は、本店移転の登記申請と同時に行うことが一般的ですので、登記が完了したら印鑑登録も終わっています。
登記完了後に法務局に備え付けてある「印鑑カード交付申請書」に必要事項を記入して、登録した会社の印鑑(法人実印)を押印して、法務局の窓口に提出します。即日発行可能ですので、少し待っていれば、その場で受け取ることができます。
本店移転と「同時に」変更できない内容があると聞いたのですが、どのようなものがありますか?
本店移転と同時に、商号、目的、役員変更等、色々な区分の変更を行うことができますが、一部同時に変更できない区分があります。
【本店移転と同時に変更できない区分】
・合同会社から株式会社への変更と同時に本店移転
・有限会社から株式会社への変更と同時に本店移転(管轄外移転)
・本店の新所在地における支店廃止と同時に本店移転
これらは現在、実務上同時に申請することが認められていませんので、ご注意ください。
本店の住所は部屋番号まで登記した方がいいのでしょうか?
本店の住所は任意で設定できますので、マンション名やビル名、部屋番号を入れても入れなくてもどちらでも構いません。ただし、マンション名や号室が入っていないと郵便物が届かないといった場合は、入れておいたほうが良いでしょう。
税務署や役所からの書類は会社の本店住所宛に届きます。特に商業施設や大型のマンション等は、号室が入っていないと郵便物が届かない事がよくありますので注意してください。
移転後の住所で商号調査は行ったほうがいいのでしょうか?
商号の事前調査を行っておくことをお勧めします。現在、法務局では同一住所で同一商号でなければ、登記申請は可能です。
比較的小規模なビルや建物であれば、偶然同じ商号の会社があることはほとんどありませんが、大規模なビルなどであれば同一商号の会社がある可能性がありますので、注意してください。
もし、同じような商号の会社がある場合は、不正競争防止法の観点からも検討する必要があります。
本店移転をすると必ず登記をしなければなりませんか?
法律により必ず登記しなければならないと定められています。
会社の住所を「本店の所在地」といいますが、この本店の所在地は法務局で登記されていますので、移転するのであれば登記されている住所を変更しなければなりません。
この変更手続きのことを「本店移転登記」といいます。本店移転登記は、移転した日から2週間以内に行わなければならないと定められているため、必ず登記しなければなりません。
本店移転登記をしないとどうなりますか?
会社法上における罰則を受ける可能性があります。
本店移転登記は、移転した日から2週間以内に行うという期限があります。
もし期限内に本店移転登記を行わない場合、登記が遅延している「登記懈怠」ということになり、代表取締役に100万円以下の過料が課される可能性があります。
しかしながら、登記懈怠した全ての会社が必ず過料を受けるかというと、そうではないようです。過料の金額は裁判所が決定しますので、何日遅延したらいくら過料がかかるといった基準がありません。
ですので、本店を移転したのであればなるべくすみやかに本店移転登記を行うことをお勧めします。
尚、過料とは、犯罪に対する刑罰としての科料や罰金のことではありませんので、前科はつきません。
2週間を過ぎた場合、登記できないのでしょうか?
2週間を過ぎても登記ができないことはありません。
本店を移転した日から原則2週間以内と決められていますが、2週間を経過したからといって、登記ができないことはありません。
いくら遅くなっても法務局へ本店移転登記を行えば、問題なく受理されます。ただし、前述のように登記懈怠として、過料が課される可能性があるので、なるべく早く登記されることをお勧めします。
本店移転登記に代表取締役の印鑑証明書は必要ですか?
代表取締役の印鑑証明書は必要ありません。
法務局の管轄外へ本店を移転した場合、新しい法務局へ再度会社の印鑑を登録しなければなりません。
会社の印鑑を登録するには、通常代表取締役個人の印鑑証明書を添付しなければなりませんが、旧本店所在地の法務局に届け出た会社の印鑑と同じ印鑑を登録するので、この印鑑証明書は不要です。
もちろん代表取締役個人の実印も必要ありません。
法務局の管轄とは何でしょうか?
法務局のエリアのことです。
商業登記を行う法務局は、管轄(エリア)が決められていて、その管轄内にある会社の登記記録が保管されています。
東京都では、本局である東京法務局の他、19の出張所と3つの支局があります。会社が東京都中央区にあれば、管轄の法務局は東京法務局本局、新宿区に会社があれば、東京法務局新宿出張所とエリアが決まっているのです。
変更登記の申請を行うには、会社の住所を管轄している法務局へ行うことになります。
法務局の管轄はどこでわかりますか?
法務局の管轄は、法務局のホームページから確認することができます。法務局のホームページには、都道府県にある法務局とその管轄が掲載されています。
※法務局の管轄区域はこちら。
登記の手続きは、会社等の法人の登記を行う「商業・法人登記」と、不動産の登記を行う「不動産登記」がありますので、間違わないようにしましょう。
東京都のように区や市など細かく管轄が分かれている法務局もあれば、県内に数箇所しかない法務局もあります。特に「商業・法人登記」は、東京都以外では本局と呼ばれている大きな法務局しか行っていないことが多くあります。
尚、登記の手続きを行っている役所を総称して「登記所」といいますが、登記所には法務局、地方法務局、支局、出張所があります。
本店移転は法務局の管轄の内外によって手続きの煩雑さも書類の数も、費用も、完了までに掛かる時間も大きく異なります。
本店移転は会社の本店の所在地が変わるとても大切な手続きですから、本店移転をすることが決まったならば、早め早めの手続きを行うようにしましょう。
本文でも掲載しましたが、本店移転は、法務局だけでなくその他の多くの役所にも届け出が必要になります。
「人」が引っ越しときするときと同様、「法人」が引っ越ししたときも様々な役所での書き換え手続きが必要なのです。どのような手続きが必要なのかをきちんと押さえて、スムーズな手続きを心がけてください。
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