ではまた明日【書評】

若干１８歳（当時はまだ高校生）の若者の、癌（脳腫瘍）闘病記です。

日記の末尾に毎回、「今日も癌に負けなかった。ではまた明日！」という言葉が綴られています。

この健気で前向きな言葉の裏には、孤独、不安、恐怖が渦巻いていたと思います。

なぜ自分だけがこんな目に遭わないといけないのか、生きる意味とは、死とは何なのか。

今、 私 は３６歳。著者の倍ほどの年月を生きてきたことになります。

ですが、もし今自分が癌で余命わずかと宣告されたら、どんな感情を抱くのか、正直まったく想像できません。

どうせ残りわずかの命、無気力になり、生きる力を失ってしまうかもしれません。

自暴自棄に陥り、恐怖を克服できずに残された生を全うできないかもしれません。

家族・友人、みなに励まされ、応援され、救われることもそれはそれはたくさんあったと思います。

でも人間、結局は一人です。

苦しみを分かち合えるといっても、死ぬときは一人で旅立たなければなりません。

死に対する恐怖と孤独にたった一人対峙したであろう若者の姿を想像すると、胸が引き裂かれます。

著者は科学者を目指していました。人生に明確な目標がありました。

病院での治療を終え、退院後、無気力で何もできない日が続きます。

そんな中、少し体調がよくなったときに、これではイケないと、大きな決心をします。

残された生を全うするためには、闘病、家族への感謝の気持ちを伝えること、受験勉強をすること。この３つしかない。と。

その前向きさ、ひたむきさに、健気さに、心を打たれます。

生きていられるということは決して普通のことではない。特別なことなんだ。と思わせてくれます。

起業して事業を営んでいると実に様々なことが起こります。予期せぬ出来事の連続です。なぜ自分の会社だけが、なぜ自分だけがこんな目に遭うのかと世の不条理に嘆きたくなるときがやってきます。

辛い時、悩んでいる時、元気がなくなった時、起業家の皆様にも、ぜひ読んでみてほしい一冊です。

一日、一日を無駄にせず大切に生きようと思えます。健康な体で仕事ができているだけでも、幸せで特別なことなんだと思わせてくれます。

今生きている人間に残されたそれぞれの時間。決して無駄にせず、全うに生きていかねばなりません。

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