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医療法人設立のメリットとして、節税効果がよくとりあげられますが、その他のメリットとしては、個人経営から法人化することにより、事業承継を計画的にすすめ、後継者問題もスムーズに解決することができますから、医業の永続性が確保されるという点が挙げられます。
病院の経営と医師個人としての収支を明確に分離し、法人会計を採用することで適正な財務管理ができます。
これにより、金融機関からの社会的信用が大幅に向上するため、医療設備購入の際など融資をうけやすくなることが考えられます。
社会保険診療報酬支払基金から支払われた診療報酬が源泉徴収されないため、資金を有効に利用できます。
個人経営の場合、社会保険診療報酬支払基金から支払を受ける診療報酬に対して一定額が源泉徴収されます。これに対し医療法人の場合、源泉徴収がありませんから、資金繰りの負担が軽減されます。
個人経営の場合、理事長に万一のことがあった場合、診療所を廃止し相続人である医師が新たに開設しなければなりません。
これに対し医療法人の場合、継続して診療所を経営することが可能となり、スムーズな事業承継対策や相続対策等を計画的にすすめやすくなります。
個人経営では認められていない分院開設が可能になります。
さらに、医療法人化により、今後需要拡大が予想される有料老人ホーム・老人保健施設や訪問看護ステーションなど介護事業を運営することができるようになり、幅広い事業展開が可能となります。
医療法人設立による各種メリットがありますが、その反面、様々な制約や条件等のデメリットもあります。
デメリットもよく把握した上で、法人化を検討することが必要です。
医療法人の医業に付随する業務(付帯業務)は、医療法人の主たる業務に支障がない範囲で運営が許可されていますが、その業務範囲は制限されています。もちろん非営利性の観点から営利事業は行えません。
社会保険が強制適用となり、役員及び従業員は健康保険・厚生年金に加入しなくてはなりません。その分、法定福利費の支出が増え負担が増加します。
なお、健康保険については、一定の手続きにより医師国保・歯科医師国保へ加入し続けることが可能です。(個人病医院の場合、常勤の職員が5人未満であれば社会保険への加入義務はありません。)
医療法人は設立後に定期的な届出が必要になりますので事務手続きが増加します。
決算事業年度終了後に決算の届出、および、総資産の変更登記、並びに、変更登記にかかる届出が必要となります
また、定款の記載事項に変更があった場合は、都道府県知事へ定款変更認可申請書を提出し許可を得る必要があります。
医療法人が解散した場合、残余財産の帰属先は『国、地方公共団体、又は他の医療法人等』に制限され個人への分配は認められません。
個人経営の場合、交際費は全額損金、つまり経費として認められていますが、医療法人では資本金の額に応じて制限があります。
資本金額1億円以下 | 1年間の交際費(上限600万円)×90% |
---|---|
資本金額1億円以上 | 全額損金算入されません。 |
医療法人は『非営利性』を求められるため、剰余金の配当が禁止されています。
したがって、利益が出た場合でも出資者に対して利益の配当はされず、剰余金は医療充実のための設備投資や退職慰労金の原資に充てるほか、全て積立金として留保しなければなりません。また、配当ではないが、事実上利益の分配とみなされる行為も禁止されています。
医師個人は、原則として役員報酬を受け取ることになり、役員報酬以外の自由に処分できる資金がなくなります。
医療法人設立の要件には『人的要件』と『財産的要件』があります。
役員(理事・監事)が欠格事項に該当していないこと。(医療法第46条の2)
また、未成年者や取引関係にある営利法人の役職員が役員に就任することは、非営利性の観点から望ましくないとされています。
医療法人の開設する病院・診療所等で業務に従事している人であり、診療所では、看護師・准看護師、歯科診療所では歯科衛生士が常勤で1名以上従事していることが望ましいとされている。
医療法人は、開設する病院・診療所等の業務を行うために必要な施設、設備又は資産を有している必要があり、それに見合った拠出が必要です。
個人医院で医業のために用いられてきた医療機器等の資産は、原則医療法人設立後も資産として承継されます。
1年間の運転資金のうち原則として、年間支出予算の2ヶ月分に相当する額の運転資金が必要です。
運転資金は預貯金や医業未収入金など換金性が高いもので算出されます。
開設する病院・診療所の土地・建物は、原則法人が所有するものであることが望ましいとされていますが、賃貸借契約による場合でも、契約が長期かつ確実なものである場合は賃貸でも差し支えありません。
この長期とは、賃貸借契約の実情に応じて判断されることとなりますが、都道府県によっては10年を基準としていることがあります。
院長本人所有の土地・建物であれば、永続性が確保されるため出資でも賃貸借でもどちらでも可能です。
テナントなどを借りている場合、賃貸契約書を法人化に当たり改めて貸借人を医療法人とした契約を締結(特約条項を付加)するか、知事の設立認可をもって賃借人を医療法人と読み替える旨の覚書が必要となります。
尚、賃貸料については、近隣の家賃相場と比較して著しく高額なものである場合には、医療法の剰余金配当の禁止規定に抵触するおそれがありますので、注意して下さい。
医療法人設立の際に、個人医院を開設する際に借り入れた金融機関からの債務やリース契約した医療機器なども、債権者承認のもと、契約を法人へ引き継ぐことができます。
しかし、法人化前の運転資金や消耗品類の取得に要した費用に係わる負債は引き継ぐことができません。
また、上記以外の要件として都道府県によっては、個人で診療所・病院を開設して1年または2年以上の安定的な経営を有していることが必要とされる場合もありますので、事前に都道府県に確認が必要です。
人的要件 | 社員 | 3名以上 | |
---|---|---|---|
理事 | 3名以上 | ||
理事長 | 1名。原則、医師または歯科医師であること | ||
監事 | 1名以上 | ||
財産的要件 | 土地・建物 | 自己所有の土地・建物を出資。または長期かつ確実な賃貸借契約が必要 | 運転資金 | 年間支出予算の2か月分 |
※設立時の社員数は、原則として4名以上必要。
※理事長である社員、理事である社員2名、監事である社員1名。
医師または歯科医師が常時1人または2人勤務する診療所を1か所のみ開設する場合、理事を1名または2名とすることができる(一人医療法人)。
この場合、可能な限り理事を2人おくことが望ましいとされるので、理事長、理事、監事である社員が各1名ずつ、3名以上必要となる。
医療法人設立認可申請をできる時期は、都道府県によって定められており、それ以外の時期に申請を行うことはできません。認可の申請は、年2回行っている都道府県が多いようですが、地域ごとの具体的な日程は各都道府県に問い合わせをしてください。
医療法人を設立するまでのスケジュールは、各都道府県によって異なりますが、概ね以下のようなスケジュールとなります。
通常、仮申請から認可書が交付されるまで半年程度かかる長い手続きとなります。
医療法人設立認可を受けた時点では、まだ医療法人は設立されていません。
設立認可後、登記を行うことで初めて医療法人が設立されることになります。
設立の認可を受けた日(認可書が到着した日)から2週間以内
設立する医療法人の所在地を管轄する法務局にて書類を提出します。
医療法人を設立しようとする場合は、『医療法人設立認可申請書』に必要事項を記入し、関係書類を添えて設立代表者名で都道府県知事または所轄官庁あてに申請する必要があります。
必要となる書類は、都道府県が独自に定めていますが、概ね下記のような書類が必要となります。
※相当期間経営実績がある診療所の場合、省略できる申請書類があります。こちらも都道府県により異なりますので、詳しくは各都道府県の担当者へ問い合わせしてください。
医療法人の設立登記が完了したら、設立の日から一定の期間内に、関係する諸官公署に各種届出をする必要があります。
個人で病院・診療所を開設していた場合、今までの診療所を廃院し医療法人として新たに医療機関を開設するという扱いになります。
提出書類 | 提出先 | 提出期限 | 備考 |
---|---|---|---|
登記完了届 | 都道府県または保健所 | 医療法人設立登記完了後、遅滞なく | |
診療所等開設許可申請 | 保健所 | 医療法人設立登記完了後、速やかに | 既に病院・診療所を開設していても申請要 |
診療所等使用許可申請 | 有床の場合、開設許可と併せて必要 | ||
診療所開設届 | 保健所 | 開設許可後10日以内 | 医療法人設立分 |
診療所廃止届 | 開設届と同時 | 個人で病院、診療所を開設していた場合、必要 | |
保険医療機関指定申請書 | 管轄する地方厚生局 | 診療所開設届提出後、速やかに | |
保険医療機関遡及指定額 | 指定申請と同時 | 遡及できる期間があるので確認必要 | |
保険医療機関廃止届 | 管轄する地方厚生局 | 保険医療機関指定申請と同時 | 個人で病院、診療所を開設していた場合、必要 |
保険医療機関届 | 社会保険診療報酬支払基金
国民健康保険団体連合会 |
保険医療機関指定通知書受領後、速やかに |
その他、有床の診療所については「構造設備許可申請書」を、エックス線に関する装置等を設置している医療機関については、「エックス線備付設置届」の届出が必要です。
平成20年10月より、地方社会保険事務局において実施されてきた保険医療機関・保険薬局に対する指導監査等の事務については厚生局に移管されています。
提出書類 | 提出先 | 提出期限 | 備考 |
---|---|---|---|
健康保険・厚生年金保険新規適用届 | 社会保険事務所 | 事業開始後5日以内 | |
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届・被扶養者届 | |||
健康保険・厚生年金保険適用事業所所在地名称・名称変更届 |
提出書類 | 提出先 | 提出期限 | 備考 |
---|---|---|---|
労働保険関係成立届出 | 労働基準監督署 | 保険関係が成立した日から10日以内 | |
労働保険概算料申告書 | 保険関係が成立した日から50日以内 | ||
雇用保険適用事業所設置届 | 公共職業安定所 | 設置の日から10日以内 | |
雇用保険被保険者資格取得届 | 資格取得の事実があった日の翌月10日まで |
医療法人は、会計年度終了後『事業報告書等』の作成、監事への提出、都道府県への決算届の提出が義務づけられております。
医療法人は、会計年度終了後2ヶ月以内に事業報告書等を作成し、理事は事業報告書等を監事に提出しなければなりません。
監事は、事業報告書等の書類を受けて、監査報告書を作成し、当該会計年度終了後3ヶ月以内に社員総会又は理事に提出しなければなりません。
定款によって定められた時期に開催し、決算の決定、役員の改選等を行います。
医療法人は、毎会計年度終了後3ヶ月以内に決算の届出を都道府県知事に提出しなければなりません。
医療法人は、その社員、評議員、債権者から請求があった場合は、正当な理由がある場合を除いてこれらを閲覧に供しなければなりません。
閲覧を行わないことができる「正当な理由」としては、個人情報保護、業務運営が不当に害される恐れがあるなどの場合が考えられます。
都道府県知事は、定款、財産目録、貸借対照表、損益計算書、事業報告書、監事の監査報告書について閲覧請求があった場合、閲覧に供しなければなりません。
医療法人の各事務所での閲覧対象者は、その社員、評議員、債権者に限られていますが、都道府県での閲覧対象者は限定なく、請求すれば一般の人でも閲覧が可能となります。
ですので、事業報告書等の書類作成については、十分留意する必要があります。
医療法人設立後にも申請や定期的な届出が必要になります。
医療法の規定に違反して登記、届出等を怠りますと過料や行政処分の対象となる場合がありますので、注意が必要です。
医療法人は、毎年事業年度終了後2ヶ月以内に財産目録に記載された資産の総額を登記する必要があります。
また、登記完了後に、都道府県知事に対し登記完了の届出を行わなければなりません。
【添付書類】
医療法人の役員に変更があった場合には役員変更届を提出します。
また、2年ごとの役員任期が満了となる際には、理事長の変更登記および役員変更の届出も併せて必要となります。
役員の変更が実質ない場合でも、任期ごとに再任を行う必要があります。
【添付書類】
新たに診療所を開設したり、附帯業務を開始しようとする場合等は、定款(寄附行為)の変更が必要です。
そして、医療法人の基本原則である、定款(寄附行為)の変更は、その変更について、都道府県知事の認可が必要とされています。
【添付書類】
事務所の所在地又は公告の方法に変更があったときは、変更届出を提出する必要があります。
また、登記完了後に、都道府県知事に対し登記完了の届出を行わなければなりません。
【添付書類】
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