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会社を設立する際や増資を行う際には、金銭(現金)で出資することが一般的ですが、金銭以外の物でも出資することができます。
これを「現物出資」といいます。
会社の資本金となるのは、お金ではなく出資するだけの価値があるのであれば「物」でも構いません。
現物出資できる物の種類は多く、資産として計上できる物であれば構いません。実際に多いのが「パソコン・プリンター・自動車」などです。
今まで個人事業で使っていた自動車やパソコンなどを法人成りする際に出資するのは、ごく自然な事です。現物出資をすることでより多くの資本金とすることができます。
※自動車の場合は、所有者があなた自身の名義になっている必要があります。ローンが残っている場合、車検証の所有者欄が自動車会社やローン会社になっていると思います。その場合は現物出資はできません。車検証の所有者記載欄とローンの有無は、事前に確認しておきましょう。不動産を現物出資する場合も同様です。登記簿謄本でその辺りの確認が必要です。
【参考】
現物出資を行う場合、原則として裁判所が選任した検査役の調査が必要です。
ただし、弁護士、税理士などの専門家に出資する物の価格が「適正な価格」である事を証明してもらえれば、検査役の調査は必要なくなります(不動産の場合は、不動産鑑定士による鑑定証明書も必要です)。
検査役の調査には時間がかかりますし、弁護士、税理士などの専門家に依頼するには時間も費用もかかります。せっかく「物」でも出資できる制度があるのにハードルが高くなってしまいます。
そこで簡単に行える要件として、現物出資の中でも「現物出資の総額が500万円以下」であれば、これらの調査・証明が不要になるという要件が規程されています。
パソコンや自動車を出資する場合、500万円を超えることはほとんどありませんので、気軽に出資をすることができます。
ただし、調査がないからといっていい加減な価額を設定することはできません。
現物出資する財産の価額は、購入価格ではなく、出資する時点での市場価格や時価としなければならず、財産の評価は適正に行う必要があります。
例えば、実際の価格よりも高く評価して出資した場合、会社は損をした事になりますので、出資者や取締役には差額を補填する義務が発生しますので注意が必要です。逆に安く評価して出資することは会社側は損をしませんので、特に制限はありません。
現物出資後は、それに伴う税金についても知っておきましょう。
現物出資は、出資者側にとって資産の「譲渡」になりますので、譲渡したことによって得られる金額によっては所得税の課税対象となります(個人事業で使っていたパソコンなど動産の場合は、事業所得に該当する場合があります)。
会社側は出資者から資産を購入したという扱いになるので、通常の物品購入と同じく経費計上して、一括償却できない資産であれば減価償却処理を行います。
現物出資が自動車の場合は出資者から会社への名義変更の手続きが必要で、自動車取得税がかかる場合があります。また、名義変更の手続きを行政書士に依頼する場合はその報酬も必要になります。
不動産の場合は、出資者には譲渡所得税が、会社には不動産取得税が課税されます。また、不動産の名義を会社名義にするため、所有権移転の登記費用や登録免許税、毎年の固定資産税もかかりますので、不動産を現物出資する場合は、事前にそれに伴う費用や税金について調べておく必要があります。更に、不動産の名義変更を司法書士に依頼する場合はその報酬も必要になります。
現物出資は500万円以下であれば簡単に行えますが、予期せぬ税金がかかったり、税務上の処理が複雑になることもありますので、予め税理士さんと相談しながら決めていくと良いでしょう。
現物出資を行う場合、原則は裁判所に検査役の選任を申請し調査を受ける必要があります。選任された検査役は、出資された財産の価額が適性かどうかを調査することになります。
この検査役の調査には、数十万円以上の費用と数ヶ月以上の調査期間がかかることもあり、現物出資することのメリットがほとんどありません。
そのため、現物出資をする場合には、検査役の調査を回避することが不可欠になります。
もし、現物出資の総額が500万円を超えるのであれば、弁護士や税理士等に依頼して、現物出資した価額が相当であることについて証明書を書いてもらいましょう。
一番適任なのは、会社の顧問税理士さんです。
当たり前ですが、財産の価額を調査してもらうので通常は費用がかかります。でも顧問税理士さんであれば、会社の財政状況や出資する財産についても把握しているでしょうし、費用も安くしてもらえるかもしれません。
証 明 書
(本店)○○県○○市○○町○○丁目○○番○○号
(商号)○○○○株式会社
代表取締役 ○○ ○○殿
上記会社の平成○○年○○月○○日開催の臨時株主総会において決議した募集株式の発行における現物出資の目的とされる金銭債権につき、会社法207条第9号の規定により、次のとおり証明します。
証明事項
1.現物出資をする者の住所、氏名
住所 ○○県○○市○○町○○丁目○○番○○号
氏名 ○○ ○○
2.現物出資の目的たる財産及びこの価格
債権者○○ ○○と債務者○○ ○○との間における平成○○年○○月○○日付金銭消費貸借契約に基づく債権金額金○○万円の金銭債権
この評価額金○○万円
3.これに対して与える株式の種類及び数
普通株式 ○○株(株式1株の金額 金○○円)
上記事項につき、平成○○年○○月○○日、弊社において、金銭消費貸借契約書、総勘定元帳及びその他の会計帳簿を綿密に調査し、債権者並びに債務者に確認したところ、いずれも相当であることを確認した。
平成○○年○○月○○日
○○税理士会所属(登録番号第○○○号)
(住所)○○県○○市○○町○○丁目○○番○○号
○○税理士事務所
税理士 ○○ ○○ 印
なお、税理士以外では、税理士法人・弁護士・弁護士法人・公認会計士・監査法人が該当します。
添付書類として、税理士が作成した証明書が必要になります。また、出資する財産が不動産の場合は、不動産鑑定士の鑑定評価もあわせて必要です。
ただし、顧問税理士さんが会社の取締役や監査役、募集株式の引受人等に該当する場合は、証明することができません。
土地や建物(ビル・マンション・戸建てなど)の不動産を現物出資する場合でもパソコンや自動車を現物出資するのと同じように取り扱われますので、その総額が500万円以下であれば、税理士や弁護士からの証明書は不要です。
出資する不動産の登記簿謄本などの資料を添付する必要もなく、特に何ら証明書を付ける必要もありませんので、不動産であっても比較的容易に出資することができます。
しかし、現物出資する不動産の総額が500万円を超える場合は、少し手続きが複雑になります。
税理士や弁護士からの証明書の他に不動産鑑定士による鑑定評価書(鑑定証明書)を準備しなければなりません。
不動産鑑定士は、不動産の鑑定評価を行う国家資格者です。
土地や建物などの価値を判定し、その価格を決定します。不動産を鑑定するのは不動産鑑定士でなければならず、不動産鑑定士でない者が鑑定を行うことはできません。
現物出資は、出資する時点での時価で出資します。不動産の時価がいくらであるかを特定しないと、出資する価格が決まりません。
現物出資する不動産の総額が500万円を超えるようであれば、まずは不動産鑑定士に依頼して、不動産の適正時価を評価をしてもらうことからはじめます。
不動産鑑定士が作成した「不動産鑑定評価書」は、法務局への添付書類になります。
不動産鑑定評価書は数十ページにも及びますので、依頼をしてすぐにできるものではありません。調査期間も含めて余裕をもったスケジュールが必要です。
もちろん不動産鑑定士への報酬が発生します。費用は対象の不動産により異なるようですが、10万円~20万円前後であることが多いようです。
不動産鑑定士の鑑定評価書をもって適正時価で出資し、出資された現物出資財産の価額が相当なことについて税理士や弁護士が証明することになります。
【パターン1】現物出資する財産の総額が500万円以下の場合
【パターン2】現物出資する財産の総額が500万円を超える場合
【パターン3】現物出資する財産が不動産でその総額が500万円を超える場合
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